【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.08】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22NI0814
利用課題名 / Title
非ヘム型チオラート系単核鉄錯体の構造解析
利用した実施機関 / Support Institute
名古屋工業大学 / Nagoya Tech.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者)/Internal Use (by ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies
キーワード / Keywords
単結晶X線回折, 金属錯体化合物, 触媒,X線回折/X-ray diffraction,高品質プロセス材料/ High quality process materials,資源使用量低減技術/ Technologies for reducing resource usage
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
久保 匡輝
所属名 / Affiliation
名古屋工業大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
猪股智彦
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
小澤智宏
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
ホルムアルデヒドはその比類ない反応性と汎用性から、現在世界で生産される最も重要な化学物質の一つである。最近の報告ではホルムアルデヒドの年間消費量は3500万トン以上とされ、将来的にもその生産量は化学工業の需要増加に伴い、単調に増加していくと推測される。本研究では、原料であるアルコールからアルデヒド(今回の場合はメタノールからホルムアルデヒド)への変換を常温常圧下、触媒的に空気中の酸素のみで進行する金属錯体化合物を合成して、その反応性を検討することが目的である。本装置利用では、触媒分子である鉄(III)錯体の構造解析を実施した。
実験 / Experimental
鉄(III)錯体の結晶は次のように調整した。アルゴン雰囲気下、配位子0.577g(1.47mmol)とトリエチルアミン0.445g(4.40mmol)を5m Lのメタノールに溶解した。この溶液に臭化鉄(III)0.434g(1.47mmol)のメタノール溶液をゆっくりと滴下し、得られた紫色の溶液を一晩室温で静置したところ、紫色の立方体型結晶が得られたのでこれを単結晶X線構造解析のサンプルに用いた。キャピラリーの先端に一辺約0.2mm程度の結晶をマウントした。測定温度は−100±1ºCとした。あらかじめ3枚測定し結晶系を決定した。その後40枚の測定を実施して得られたデータをClystal Structureを用いて解析した。解析の際には水素原子は等方性温度因子を固定化した。
結果と考察 / Results and Discussion
結晶の構造解析は全反射数に対する計算結果のR値が3.52%であり、測定値と実測値が非常によくあっていた。鉄(III)イオンは全て配位子から供与される原子で構成される6配位八面体構造を有していた。Fe-N、 Fe-S結合はそれぞれ2.383Å、2.277Åであり、6配位構造を有する高スピン型鉄(III)錯体に典型的な距離を示していた。既にEPRスペクトル測定によって本錯体が高スピン型Fe (III)錯体の電子状態にあることが示されており、これと一致する結果であった。一方Fe(III)イオン周辺における配位原子がなす角度においては、シス位に配置されたS-Fe-S間が94.4ºで90ºよりも大きかったのに対してS-Fe-N間では82.0ºと小さくなっていた。これは電子密度の大きなS原子間の静電反発が大きいためと考えられる。本錯体を用いて酸素雰囲気下メタノール中室温で撹拌したところ、ホルムアルデヒドの生成が確認された。これは、本錯体が配位飽和である6配位構造を有しているにもかかわらず酸素分子の活性化が可能であることを示しており、現在この構造をもとに、各種溶媒や化学的・電気化学的な酸化還元電反応を通じて、反応機構を検討している。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 N3S3型配位子を用いた鉄(III)錯体の結晶構造
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
なし
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 久保 匡輝、中根 大輔、小澤 智宏、猪股 智彦、増田 秀樹 ”非ヘム型チオラート系単核鉄錯体と酸素の反応メカニズム” 日本化学会 第103春季年会
- 久保 匡輝、中根 大輔、小澤 智宏、猪股 智彦、増田 秀樹 ”メタノール酸化を触媒するN2S3Fe (III)錯体の酸素との反応” 錯体化学会 第72回討論会
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件