利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.04.25】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22NI0801

利用課題名 / Title

窒素分子の活性化を目指したクロム錯体の合成

利用した実施機関 / Support Institute

名古屋工業大学

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion

キーワード / Keywords

水素エネルギー関連材料,再生可能エネルギー材料,X線回折/X-ray diffraction,資源使用量低減技術,資源循環技術


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

梶田 裕二

所属名 / Affiliation

愛知工業大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

小久保 佳亮

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

小澤 智宏

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub),技術代行/Technology Substitution


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NI-008:単結晶X線構造解析装置群
NI-009:電子スピン共鳴装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

アンモニアは肥料や化成品の原料だけでなく水素キャリアやエネルギー資源としても注目されている物質であるが、その工業的生産方法は大量のエネルギーと二酸化炭素を排出するハーバー・ボッシュ法であり、この代替方法の研究が盛んに行われている。申請者の研究グループでは、これまでにバナジウム(III)イオンを用いて還元剤を必要としない窒素錯体の合成と、それを用いた常温常圧での窒素固定について成功し、報告している。そこで今回申請者らは、中心金属をバナジウム(III)イオンからクロム(III)イオンへ変更し、同様に還元剤を必要としない窒素錯体の合成と、常温常圧での窒素固定について検討することを研究目的とした。

実験 / Experimental

申請者の研究グループで用いているトリアミドアミン誘導体(tris(2-benzylaminoethyl)amine)を配位子を合成した。合成した配位子は1H NMR、13C NMR、IRスペクトルでその合成を確認した。合成した配位子を3当量のn-ブチルリチウムとジエチルエーテル中で反応させ、リチオ化した後、窒素雰囲気下でCrCl3と反応させることで目的とする窒素錯体を合成した。合成した錯体は、ジエチルエーテルの反応混合液中から再結晶でき、単結晶を得ることに成功した。得られた錯体の結晶構造は、単結晶X線結晶構造解析装置(NI-007, 008)により決定された。また、得られた単結晶のトルエン溶液を調整し、EPRスペクトル装置(NI-009)を用いて錯体の電子状態を見積もった。また、これらの測定以外に、NMRスペクトル、ラマンスペクトル、元素分析の測定もおこなった。

結果と考察 / Results and Discussion

合成したクロム錯体の結晶構造は、一つのクロムイオン(Crイオン)に一つのトリアミドアミン配位子が配位し、二つのCrイオンの間を二窒素配位子がend-on型で架橋配位した、二核クロム窒素錯体であることが明らかとなった。二窒素配位子のN-N結合距離は1.188 Åであり、フリーの窒素分子におけるN-N結合距離1.1 Åよりも大きく伸長していた。また、ラマンスペクトル測定によるN-N伸縮振動の値は1772 cm-1であり、この値もフリーの窒素分子(2331 cm-1)よりも大きく低エネルギー側で観測されたことから、架橋配位した二窒素配位子は、大きく活性化されていることがわかった。また、EPRスペクトルはサイレントを示したため、1H NMRスペクトルを測定したところ、常磁性シフトしたピークを観測した。さらに1H NMRを用いたEvans法により磁化率を測定したところ、S=1であることが明らかとなった。これらの結果から、この二核錯体は、2つのCr(III)イオンと0価の二窒素配位子、もしくは、2つのCr(IV)イオンと-2価の二窒素配位子のどちらかの電子状態であることが明らかとなった。さらに、N-N結合距離とN-N伸縮振動の値から、この錯体は、2つのCr(IV)イオンと-2価の二窒素配位子である可能性が示唆された。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 3価クロムとトリアミドアミン配位子を用いた二核窒素錯体の合成と構造(口頭発表,日本化学会第102春季年会)
  2. Syntheses and Structures of Vanadium Dinitrogen Complexes Bearing Triamidoamine Ligands with Alkali Ions(口頭発表,錯体化学会第72回討論会)
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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