利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.10.21】【最終更新日:2024.10.21】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22MS0005

利用課題名 / Title

石英ガラス上に形成するナノ水滴の粘弾性計測

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)その他/Others

キーワード / Keywords

原子間力顕微鏡, ぬれ性, 表面・界面


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

荒木 優希

所属名 / Affiliation

金沢大学理工研究域数物科学系

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

井村 晃男

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

湊 丈俊

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-204:走査プローブ顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

本研究の目的は、湿潤環境でガラス表面に形成されるナノメートルサイズの微小な水滴(ナノ水滴)の物性および形成機構を明らかにすることである。これまでに我々が周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)を用いて行ってきた観察では、ナノ水滴はガラスの上に直接形成しているのではなく、均質な水膜の上に形成している可能性が示唆されている。ただし、水膜はガラス表面に均質に形成しているため、FM-AFMによる表面形状観察のみではその存在を検証できない。そこで、分子科学研究所所有のピークフォースタッピングAFMを用い、ナノ水滴と水膜の形成を粘弾性計測から明らかにすることを本課題の目的とした。

実験 / Experimental

観察には、ナノ電気計測オペランド走査型プローブ顕微鏡(Dimension NanoElectrical)のピークフォースタッピングモードを用いた。装置付属の密閉セルを市販の調湿装置を改良した湿度制御システム(図1)に接続し、試料周囲の湿度を選択的に変化させた。10〜100%まで段階的に湿度を上げながらガラス表面の凝着力マッピングを行い、湿度との相関を検証した。

結果と考察 / Results and Discussion

1〜2μm四方の視野で凝着力マッピングを行なったところ、視野内のガラス表面の粘性が湿度と共に有意に上昇していることが明らかとなった(図2)。これは、湿度上昇に伴ってガラス表面に水膜が形成されていることを示す。一度高湿環境で観察した試料を、乾燥空気を流した後に再度観察した際には湿度10%付近でも高い凝着力が観測され、一度ガラス表面に形成した水膜はガラスと強い結合を持っていること、それに伴い大きな界面張力を持つことが推測される。今後、FM-AFMによるフォースカーブ計測を併用し、この水膜の厚さを評価する予定である。一方で、本課題期間中の観察では、ナノ水滴と思しきものは見られなかった。これは、ナノ水滴の形成がガラス表面の構造や物性に依存していることを示唆することに加え、観察視野のドリフトの影響も大きいと考えられる。本研究で用いた湿度調整システムは、図1に示したように密閉セルと接続された前室に調湿された空気を溜め、そこから空気がセル内にポンプによって流される。特に設定湿度を変化させた際に空気の流入量が増加し、観察視野のドリフトが起こったと考えられる。今後、前室や調湿空気の経路について最適化し、AFM観察に適した湿度調整システムの構築を目指したい。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1湿度制御機構の模式図



図2ガラス表面の凝着力の湿度依存性


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Yuki Araki, Microscopic behavior of nano-water droplets on a silica glass surface, Scientific Reports, 14, (2024).
    DOI: 10.1038/s41598-024-61212-1
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. Yuki Araki, Toyoko Arai, “In situ observation of Nano-Water Droplet on SiO2 glass by FM-AFM”, The 22nd International Vacuum Congress (IVC-22), Sapporo, R4.9.14.
  2. 荒木優希,湊丈俊,新井豊子,「周波数原子間力顕微鏡によるガラス表面のナノ水滴観察」,表面界面スペクトロスコピー研究会2022,令和4年12月9日.
  3. 招待講演:荒木優希,「ガラス上に形成するナノ水滴の粘性計測」,Bruker主催 第2回走査型プローブ顕微鏡オンラインセミナー 〜環境制御測定の基礎と技術応用の最前線〜,オンライン,令和4年10月27日.
  4. 招待講演:Yuki Araki, “In situ observation of nano water droplet on glass”, Kyoto Workshop on Investigation of Solid-Liquid Interfaces by Atomic Force Microscopy, Kyoto, R5.2.11.
  5. 招待講演:荒木 優希,「ナノスケールのぬれの世界 −ナノ水滴の形態・挙動・物性−」,東京理科大学総合研究院ウォーターフロンティア研究センター 第2回ウォーターフロンティアシンポジウム,東京,令和5年3月14日.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

印刷する
PAGE TOP
スマートフォン用ページで見る