【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.04】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23KT0043
利用課題名 / Title
Ni/バイオチャー触媒を用いた木質バイオマスのクリーンガス化の検討
利用した実施機関 / Support Institute
京都大学 / Kyoto Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
Woody biomass, gasification, nickel catalyst, biochar, cellulose, hemicellulose, lignin, delignification
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
Eljamal Ramadan
所属名 / Affiliation
京都大学大学院 エネルギー科学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
南 英治
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
清村 勤
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
KT-403:モノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
木質バイオマスの熱分解ガス化で得られる合成ガス(H2、CO)は、ガスエンジンによる高効率発電やフィッシャートロプシュ合成による炭化水素生産に利用できる。しかし、タール・コークの副生や合成ガス(H2、CO)への選択性が十分ではないことが課題であった。木質バイオマスのガス化では、まず一次熱分解で揮発生成物と固体チャーが生成され、その後に気相での二次熱分解でガス、タール及びコークが生成される。本研究では、二次熱分解におけるガス化反応を促進するため、安価で多孔質なバイオチャーにNiを担持した触媒を調製し、ガス化への効果を検討した。
実験 / Experimental
スギ材をN2気流下、750℃で炭化してバイオチャーを調製した(以後、BC)。また、このBCにNi2+を含浸させ、H2気流下で熱処理することでNi/バイオチャー触媒(以後、Ni-BC)を調製した。さらに、亜塩素酸塩法によって脱リグニンしたスギ材にNi2+を含浸させ、N2気流下、750℃で炭化、さらにH2気流下で熱処理する方法でも触媒を調製した(以後、Ni-DLBC)。これらの触媒はエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)やモノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡(TEM-EDX)によって観察した。スギの熱分解ガス化は、石英ガラス管(内径4mm、厚さ1mm)内の上流側にスギ木粉40mgを原料として、その下流側にBC、Ni-BCまたはNi-DLBCを触媒として25mg充填した。この石英管を円筒炉内に設置し、N2気流下、様々な温度条件でスギ木粉を熱分解処理した。生成ガスはガスバックで捕集し、マイクロガスクロマトグラフィーで分析した。
結果と考察 / Results and Discussion
遷移金属のNiは接触分解や改質を触媒する目的で担持されたが、最初にバイオチャー表面にNiをより多く担持させるための調製条件を検討した。Ni-BCの場合、様々な炭化温度で調製を試みたが、Ni担持量は常に低く2wt%以下であった。一方、Ni-DLBCでは、SEM-EDXによる観察結果から、炭化温度750℃のときNi担持量は15 wt%に増加した。スギの脱リグニン処理により、ヘミセルロースのウロン酸のカルボキシ基にNi2+がアクセスしやすくなった、又は脱リグニンの過程で多糖が酸化分解を受け、カルボキシ基が増加してNi2+の取り込みが増加したなどの理由が考えられる。カルボキシ基の増加はATR-FTIR分析によっても確認された。さらに、BC、Ni-BC及びNi-DLBCをTEM-EDX観察した結果、Ni-DLBCにおいてNiナノ粒子がバイオチャー上によく担持、分散している様子も確認された。その結果、期待通り、Ni-DLBCを用いた場合のガス収率はBCやNi-BCの場合よりも著しく向上し、合成ガスの割合も高くなった。さらに、Ni-DLBCの場合は石英ガラス管の内壁にコークの付着が観察されず、コークの副生が大幅に抑制されたと考えられた。以上のように、本研究によってNi/バイオチャーは木質バイオマスガス化における有望な触媒であることが明らかとなり、触媒活性を向上させるには脱リグニン処理が一つの有効な手段であることが示された。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- Eljamal Ramadan, Hanada Ryosuke, Nomura Takashi, Minami Eiji, Kawamoto Haruo: New Biochar Catalyst Production Technique from Japanese Cedar Wood for Efficient Pyrolysis/Gasification of Woody Biomass, 第74回日本木材学会大会, 京都, 2024年3月13-15日, 講演番号P13-03-1700
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件