【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.28】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23TU0071
利用課題名 / Title
ボールSAWセンサの社会実装/Social implementation of ball SAW sensors
利用した実施機関 / Support Institute
東北大学 / Tohoku Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials
キーワード / Keywords
IoTセンサ,球面スパッタリング,球面マスクレス露光,ガスクロマトグラフ,微量水分計,弾性表面波素子,ボールSAWセンサ 水晶,感応膜,アモルファスシリカ,有機薄膜,MEMS/NEMSデバイス/ MEMS/NEMS device,バイオセンサ/ Biosensor,におい・ガスセンサ/ Odor/gas sensor,スパッタリング/ Sputtering,リソグラフィ/ Lithography,光リソグラフィ/ Photolithgraphy
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
赤尾 慎吾
所属名 / Affiliation
ボールウェーブ株式会社
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
竹田宣生,大泉透,福士秀幸,岡野達広,田中智樹,菅原真希,山中一司,岩谷孝光
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
戸津健太郎,森山雅昭,松本行示
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),共同研究/Joint Research
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
TU-068:球面露光装置
TU-166:球面成膜用スパッタ装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
ポータブル・ガスクロマトグラフ[1]の検出器として、東北大学の設備を利用して製作しているポリジメチルシロキサン(PDMS)を感応膜としたボールSAWセンサの特性ばらつきを評価した。
実験 / Experimental
直径3.3 mmの水晶球にフォトレジストを平均膜厚2.9 µmで塗布し、球面露光装置(TU-068)にてハーフピッチ11 µmの櫛型パターン(150 MHz用)とハーフピッチ20 µm(80 MHz用)の櫛型パターンをレーザー光源パワーファクタ40%で露光した後、球面成膜用スパッタ装置(TU-166)にてクロム薄膜を5 mTorrにて成膜し、リフトオフ法により櫛型電極を形成することで、2周波ボールSAW素子を製作した。この素子の表面に軸外スピンコート法によりPDMS溶液を3000 rpmで塗布することでPDMS感応膜を形成し、ガスクロマトグラフ用の2周波ボールSAWセンサとした。一方で、異なる時期に2回に分けて製作した計18個の150MHzボールSAWセンサにおいて、PDMS感応膜塗布後の弾性表面波の伝搬特性とクロマトグラムにおける検出感度との相関を調査した。
結果と考察 / Results and Discussion
製作した2周波ボールSAW素子の外観写真をFig.1(a)に、櫛型電極部写真を同図(b)に示す。球面露光装置と球面成膜用スパッタ装置により、直径3.3 mm水晶球の表面に150MHz励振用のハーフピッチ11 µmの櫛型電極と80MHz励振用のハーフピッチ20 µmの櫛型電極が形成できていることがわかる。
次に、2回に分けて製作した150 MHzボールSAW素子18個における弾性表面波(Surface Acoustic Wave: SAW)伝搬特性を評価した。PDMS感応膜成膜前の減衰率は平均で46.1 dB/m、標準偏差3.3 dB/mであり、ボールSAW素子自体は非常に歩留まり、再現性ともに良好に製造されていることがわかる。
一方で、PDMS感応膜成膜後であるボールSAWセンサの弾性表面波の減衰率は、平均96.3 dB/mであるものの、最大減衰率は159.2 dB/m、最小減衰率は51.8 dB/mと大きくばらついた。この減衰率の増加分がPDMS感応膜による減衰と考えて良いので、PDMS感応膜の塗布工程のばらつきがまだ大きいと考えられる。球面全体での膜厚分布を測定するのは容易ではないが、今後の改善が必要である。
このボールSAWセンサの感応膜の膜厚ばらつきがガスクロマトグラフの検出器としての測定感度にどのように影響するかを評価した。Fig.2 が、C6からC9までの直鎖型炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンとmキシレンを所定の濃度で混合した標準ガスの代表的なクロマトグラムである。これらの測定ピークの中で保持時間4.7分のC7(n-ヘプタン)と保持時間8.7分のC9(n-ノナン)に着目して、弾性表面波の位相変化であらわした測定感度とPDMS感応膜成膜により生じた減衰率増加分との関係を表したのがFig.3 である。C7、C9のいずれも、測定感度は減衰率増加分、すなわち、感応膜の膜厚に対して極大値を持つ。したがって、感応膜の膜厚には最適値があり、減衰率の増分が60~70 dB/mとなるような膜厚に制御すべきであるとわかった。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig.1 製作した2周波ボールSAWセンサ
左:(a)外観、右:(b)櫛歯電極
Fig. 2 代表的な8種類の混合ガスのクロマトグラム
Fig.3 製作したボールSAWセンサの測定感度と感応膜による減衰率増加分の関係
左:(a)C7(n-ヘプタン)、濃度 10 ppmv、右:(b)C9(n-ノナン)、濃度 50 ppmv
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
参考文献:
[1] Japanese Journal of Applied Physics 61, SG1051 (2022)
口頭発表:
・竹田宣生,“ボールSAWセンサを用いた超小型可搬ガスクロマトグラフ”,STSスマートセンシング/MEMSデバイスセッション,セミコン・ジャパン,令和5年12月14日.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件