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金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジットの創製によりイムノクロマト診断迅速化

 北陸先端科学技術大学院大学は2018年9月21日,同大学物質化学領域の前之園 信也教授らが,新日鉄住金化学株式会社総合研究所と連携し,医療診断薬(イムノクロマト)の高感度化・迅速診断化に有効な金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子を創製したと発表した.本研究の一部は,文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業(分子・物質合成)の支援により実施され,成果はアメリカ化学会刊行ACS Applied Materials and Interfaces誌に掲載された(注).

 イムノクロマト法は,病原ウイルスなどの抗原を含む検体を,金コロイド等の着色粒子で標識された抗体(標識抗体)と結合させて,目視検出する検査・診断法である.特別な設備が不要で,短時間に目視判定ができるため,様々な医療現場において重要な検査手法として利用されているが,その感度は十分とは言えず,検体中の抗原やバイオマーカーが比較的豊富に存在する検査項目への適用に限られていた.季節的なインフルエンザなどの世界的な感染症から身を守るために,感染性ウイルスの高感度で迅速な診断テスト開発は緊急の課題である.

 これに応えて,本研究グループは従来標識粒子として利用されている金や白金ナノ粒子をラテックス粒子に数百~数万個担持させることにより,粒子1個当たりの発色性が極めて強い金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子を合成した.担体となるラテックスにはP2VP(poly(2-vinylpyridine))を用い,金ナノコンポジット(Au-P2VP),白金ナノコンポジット(Pt-P2VP)の波長300~900nmにおける吸収スペクトルを担体のP2VPおよび金コロイド(AuNP)と比較した.AuNPの光吸収は波長520nmにピークを示すが,Au-P2VPにおける吸収ピークは591nmにシフトし,Au NPの吸光度は100倍の粒子数でも全波長域にわたりAu-P2VPより低い.この波長域における吸光度は,Au-P2VPからPt-P2VP,さらにP2VPへと順に低くなる.

 次に,ナノコンポジット粒子をモノクローナル抗体(mAb)に結合してインフルエンザA(H1N1)抗原の検知を試みた.粒子サイズや金属ナノ粒子の担持量を最適化することで,イムノクロマトの感度と検出時間を飛躍的に向上することが確かめられた.比較のためAuナノ粒子をmAbに結合して検知を行なったところ,インフルエンザA抗原の最小検出濃度はAuナノ粒子-ラテックス及びPt-ラテックスナノ粒子ナノコンポジットにおいてそれぞれ6.25×10-3と2.5×10-2HAU/mL,Auナノ粒子では4.0×10-1HAU/mLであった.Au-P2VPにおける感度は,Au NPの64倍,Pt-P2VPにおいては16倍の感度向上が確認された.

 さらに,金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子の表面をビオチニル化蛋白質で機能化し,ビオチン-アビジン結合を利用することにより,様々な抗体,バイオマーカーを粒子表面にコーティング可能であることを示した.

 今後,開発した金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子の実用化を推進し,磁性粒子の担持など新しい機能化を検討するとともに,様々な分野での新しいアプリケーションの創製を期待している.

(注)Yasufumi Matsumura, Yasushi Enomoto, Mari Takahashi, and Shinya Maenosono, "Metal (Au, Pt) Nanoparticle-Latex Nanocomposites as Probes for Immunochromatographic Test Strips with Enhanced Sensitivity", ACS Applied Materials and Interfaces, Article ASAP, DOI: 10.1021/acsami.8b11745; Publication Date (Web): September 5, 2018