【サービス停止のお知らせ】ご迷惑をおかけしますが,どうぞ宜しくお願いいたします.
 11/16(金)14時~11/19(月):本サイトの閲覧できなくなります。
 ※11/20(火)より,URLが https://www.nanonet.go.jp/ に変更になります.(旧URLからは,自動的に転送されます.)
 11/22(木)14時~11/26(月)10時頃:本サイトの閲覧および問合せフォームからのお問い合わせ受付ができなくなります.
 

ナノテク情報

合成・材料

AIによる有機分子の設計とその実験的検証に成功 ~有機エレクトロニクスなど機能性分子の設計に道筋~

 国立研究開発法人 理化学研究所(理研),同 物質・材料研究機構(NIMS),同 科学技術振興機構(JST),及び東京大学は2018年8月24日,理研 革新知能統合研究センター 分子情報科学チームの隅田 真人特別研究員ら,NIMS国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の石原 伸輔主任研究員ら,の共同研究グループが人工知能(AI)を用いて,所望の特性を持ち,かつ合成可能な有機分子の設計に成功した,と発表した.本研究は,JSTのイノベーションハブ構築支援事業「情報統合型物質・材料開発イニシアティブ(MI2I)」の支援を受けて行われ,原著論文は米国化学会刊行のACS Central Scienceに掲載された(注).

 古くから,所望の特性を持つ有機分子を計算機に設計させる技術が注目されてきたが,有機分子を構成する化学法則を前もって人が入力しておく必要があった.これに対し,「深層学習による人工知能(AI)技術」の発展は,有機分子を構成する法則を自動で計算機に学習させることを可能にした.一方,「量子力学に基づいた分子シミュレーション技術」も進歩し,様々な有機分子の性質や安定性を予測できるようになってきた.このため,機械学習分子生成を,密度汎関数理論(DFT),合成実験,測定評価と結びつけたAI支援化学が可能になった.しかし,それが現実にどこまで有用であるかは実証されていない.

 そこで,本研究グループは,所望の波長の光を吸収する有機分子を設計し,それが実際に合成可能かを検証した.まず,データベースにある水素(H),炭素(C),窒素(N),酸素(O)原子で構成される分子量400程度の13,000個の有機分子に関する情報(構造式)を入力し,「Recurrent Neural Network(RNN)」という深層学習の手法によってあらゆる有機分子の法則を学習させた.次に,200~600nm(光エネルギー6.2-2.1eV)を五つの波長に分け,この領域に吸収波長を持つ分子を「モンテカルロ木探索(Monte Carlo Tree Search: MCTS)で探索し,3,200個の分子を見つけた.さらに,この分子の性質と安定性をDFT計算で評価し,86個の分子を選んだ.選ばれた分子の数は吸収波長帯によって異なり,200nmの36個に対し,600nmでは1個だった.計算には,12コア(Intel Xeon E5-2689v3 CPU)のサーバーで10日間(240時間)を要した.

 選ばれた86個の分子のうち6個は,合成法が知られていたので,実際に合成して紫外可視吸収スペクトルを測定したところ,6個のうち5個が所望の吸収波長を示すことが分かった.一例として,ベンゼン環に“-OH”“-N-N=O”の2つの側鎖がついた分子の10mMメタノール溶液の紫外線吸収スペクトルに,DFTで予測された,350nmと400nmの吸収が観測されたことがリリースの図に示されている.

 本研究成果は,機能性分子のAIを用いた自動設計プラットフォームの概念実証(Proof of Concept)である.今後,太陽電池の集光材料,電気貯蔵材料,有機EL用の発光・ホスト材料などの有機エレクトロニクス分野における機能性分子開発の加速が期待される.

(注)Masato Sumita, Xiufeng Yang, Shinsuke Ishihara, Ryo Tamura, and Koji Tsuda, "Hunting for organic molecules with artificial intelligence: Molecules optimized for desired excitation energies", ACS Central Science, Article ASAP, DOI: 10.1021/acscentsci.8b00213; Publication Date (Web): August 20, 2018