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ナノテク情報

デバイス・応用

体温・大気間のわずかな温度差で発電する新方式マイクロ熱電発電素子を発明 ~IoT時代を支える永久電源の実現に道を拓く~

 早稲田大学(早大)および大阪大学(阪大)は2018年6月21日,早大の富田 基裕 次席研究員,および渡邊 孝信 教授,阪大の鎌倉 良成 准教授,静岡大学の池田 浩也 教授らの研究チームが,国立研究開発法人 産業技術総合研究所と共同で,半導体集積回路の微細加工技術を応用した,体温で発電する高出力密度の熱電発電素子の開発に成功したことを発表した.本研究成果は米・ハワイで開催の国際会議VLSIシンポジウムで発表された(注).

 物質に温度差をつけると起電力が生じる現象はゼーベック効果と呼ばれて19世紀から知られているが,太陽光発電などと比べて発電効率が劣り,応用が限られていた.近年,ナノテクノロジーを活用して高い発電効率を可能にする新物質が次々に開発された.シリコン(Si)ナノワイヤでも高い発電効率を実現できることが10年ほど前から分かっており,現在,Siによる小さな熱電発電素子の開発が世界中で行われている.

 Siのナノワイヤで,大きな温度差をナノワイヤ内に維持するため,従来は,ナノワイヤを長くして熱抵抗を大きくし,熱がナノワイヤの周辺に漏れないようにSi基板に空洞を作り,ナノワイヤを空中に架橋させる構造が採用されてきた.しかし,機械的な強度の低下や,高密度で集積ができない,製造コストが高くなるなどの課題があった.

 これに対し,研究グループはSiナノワイヤを空中架橋せずにSi基板表面の酸化絶縁膜上に直接形成し,Si基板の厚さを薄くし,基板の裏面を冷却することにより,基板表面から裏面へ熱流が起こるようにした.これにより,高温熱源からの熱がナノワイヤの高温電極を通ってあまり広がらずに基板裏面に流れるようになる.即ち,従来はナノワイヤから基板に熱が流れないようにしていたのが,逆に流れるようにしたものである.その結果,高温部は高温電極周辺に限られ,ナノワイヤを短くできる.この方式ではナノワイヤが短いほど単位面積あたりに生み出される電力が大きくなることが,シミュレーションにより確認された.

 発電素子の構造は,高温側電極のバーを挟んで2本の低温側電極のバーを配置し,一方の低温側電極と高温側電極の間にp型Siナノワイヤを多数並列接続し,他方の低温側電極と高温側電極の間にn型Siナノワイヤを多数並列接続した.高温側電極の上に帯状の熱伝導層を設け,その上からヒーター加熱する.低温側電極は基板の裏面の水冷により冷やされる.p型Siナノワイヤ接続の低温側電極とn型Siナノワイヤ接続の低温側電極の間に,前者を+とする起電力が得られる.長さ250nmのナノワイヤで,従来型に比べて発電密度が一桁増加し,5℃の温度差から,1平方cm当たり12μWの電力が生み出せることが分かった.体温と大気の間の温度差ほどの温度差をエネルギー源として,センサの駆動と間欠的な無線通信を可能にする電力である.現在の半導体集積回路の製造方法と同じ方法で作製できるため,大量生産により加工コストを大幅に下げることもできる.今後のIoT社会を支える環境電源技術として役立つと期待される.

(注)Motohiro Tomita, Shunsuke Ohba, Yuya Himeda, Ryo Yamato, Keisuke Shima, Takehiro Kumada, Mao Xu, Hiroki Takezawa, Kohei Mesaki, Kazuaki Tsuda, Shuichiro Hashimoto, Tianzhuo Zhan, Hui Zhang, Yoshinari Kamakuri, Yuhei Suzuki, Hiroshi Inokawa, Hiroya Ikeda, Takashi Matsukawa, Takeo Matsuki, and Takanobu Watanabe, "10 μW/cm2-Class High Power Density Silicon Thermoelectric", 2018 Symposia on VLSI Technology and Circuits, June 20, 2018.