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薄型で伸縮自在なスキンディスプレイの開発に成功 ~スキンセンサーで計測された心電波形を動画表示し,在宅ヘルスケア応用に期待~

 東京大学,大日本印刷株式会社,および国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)は2018年2月18日,同大学大学院工学系研究科染谷 隆夫 教授を中心とした同大学と大日本印刷株式会社の共同研究チームが,薄型で伸縮自在なスキンディスプレイの製造に成功し,スキンセンサーで計測された心電波形の動画を皮膚上に貼り付けたスキンディスプレイに表示できるセンサーシステムを開発したことを発表した.本研究成果は,アメリカ科学振興協会(AAAS)年次大会で発表された(注).この発表は多数の海外科学ニュースサイトが紹介している.なお,本研究の一部は,JST未来社会創造事業探索加速型本格研究(ACCEL型)の研究費助成を受けた.

 急速に超高齢社会になりつつある日本では,自分自身で健康を管理し医薬製品を使うセルフメディケーションやセルフケアの重要性が増している.自宅や介護施設,病院など場所や時間を問わず,「いつでも,どこでも,誰もが簡単に,正確に生体情報をモニタリングし,その情報に簡単にアクセスできる技術」が求められている.ウェアラブルデバイスで生体情報をモニタリングし,スマートフォンやタブレット端末に表示することができるようになってきた.しかし,このような手法は,入院中の高齢者や幼児にとっては簡単ではないため,計測から情報表示までがだれでも利用できる新しい技術が求められている.

 この共同研究では,薄型で伸縮自在なスキンディスプレイの製造に成功し,スキンセンサーで計測された心電波形の動画を皮膚上に貼り付けたスキンディスプレイに表示することができるようにした.このスキンディスプレイは,薄いゴムシートに16×24個のマイクロLEDを埋め込んだもので,全体の厚みは約1mmで,繰り返し45%伸縮させても電気的・機械的特性が損なわれず,薄型・軽量で伸縮自在なため,皮膚に直接貼り付けても人の動きを妨げない.最も伸ばした状態と最も縮めた状態のLED配列のピッチは4mmと2.4mmである.マイクロLEDの大きさは1mm×0.5mm,発光波長は630nm(赤色),駆動電圧は2Vであり,アクティブ素子を使わないパッシブマトリックス方式で駆動され,表示スピードは60Hz,最大消費電力は13.8mWである.このスキンディスプレイ実現の特徴は,構造上ではゴムシートに硬い電子部品と伸縮性のある配線の接続部分の応力集中を避ける構造を採用して,機械的耐久性が格段に向上したこと,製造技術としては,量産実績のあるスクリーン印刷法による銀配線,マイクロLEDの一般的実装装置とはんだペーストを使い,早期実用化と低コスト化を可能とすることにある.

 既に2017年7月に東京大学の染谷教授の研究グループは,皮膚貼り付け型ナノメッシュセンサーの開発に成功し,温度,圧力,筋電を計測したが,今回初めて心電波形の計測が可能になったという.また,同研究グループは,2009年5月に有機エレクトロルミンッセンス・ディスプレイを,2016年8月に有機LED素子で7セグメントディスプレイを発表しているが,今回のディスプレイは無機半導体のマイクロLEDを用いて従来例より圧倒的な大気安定性と機械的耐久性を有し,上記センサーと一体化して生体信号を計測し情報を表示する利用者に無負担なシステムを開発した.大日本印刷(株)は3年以内の実用化を目指している.

(註)Takao Someya,"Continuous health-monitoring with ultraflexible on-skin sensors", Annual Meeting, American Association for the Advancement of Science; AAAS, February 17,2018