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次世代相変化メモリーの新材料を開発 ~超低消費電力でのデータ書き込みが可能に~

 東北大学は2018年1月12日,同大学大学院工学研究科知能デバイス材料学専攻の須藤祐司 准教授らの研究グループが,既存材料とは逆の電気特性を示す相変化材料(Cr2Ge2Te6)の開発に成功したことを発表した.本研究は,独立行政法人 学術振興会(JSPS)の科研費及び二国間交流事業(日韓),並びに公益財団法人 加藤科学振興会の助成を受け遂行され,成果は,ACS Applied Materials & Interfaces に掲載された(注).

 微細化により高集積化を進めてきたフラッシュメモリーも動作限界に近づきつつあると言われており,さらなる微細化も可能と考えられる相変化メモリー(PCRAM:Phase Change Random Access Memory)は,次世代不揮発性メモリーとして注目されている.PCRAMは,異なる大きさの電気パルスを印加してジュール加熱することで可逆的に相変化する「相変化材料」を用い,アモルファス相と結晶相の違いを情報として記憶するもので,相の違いによる電気抵抗の違いで情報を電気的に読み出す.現在,PCRAM用の相変化材料には,Ge2Sb2Te5をはじめとするGe-Sb-Te系カルコゲナイド化合物(GST)が利用されている.GSTは7~8Vのパルス電圧印加で結晶化して3kΩ程度の低抵抗・リセット状態,2~4Vでアモルファス・105Ωの高抵抗・セット状態になる.GSTのメリットは,相変化の高速性(数十ns)であるが,次世代不揮発性メモリーに向け,次の材料的課題が指摘されている.

 第一はGSTが160℃程度の温度で容易に結晶化してしまうことで,書き換えの際に,隣接する記憶素子に誤書き込みのリスクがある.このことは,記憶素子の微細化・高密度化に伴って顕著になる.第二は,GSTの融点が高く,また,結晶相の電気抵抗が低いためにアモルファス化するために大きなエネルギーが必要であり,PCRAM動作の消費電力が高いことである.

 研究グループは,産業技術総合研究所の齊藤雄太研究員および韓国 Hanyang 大学の Y.H. Song 教授らと共同で,上記課題の解決に向けた研究を行い,元素間の結合の強さを考えて,アモルファスで耐熱性に優れる材料を探した.この過程でCr2Ge2Te6化合物が270℃程度と高い結晶化温度を有し,極めてアモルファス相の耐熱性に優れていることを見出した.更に,この化合物は,結晶相の方がアモルファス相よりも電気抵抗が高いという従来とは逆の特性を持つ大変ユニークな材料であることが分かった.パルス印加電圧~1.5Vで結晶化して電気抵抗は105Ω,~0.6vでアモルファスになり,電気抵抗は~400Ωに下がる.この結晶化に伴う電気抵抗の上昇は,半導体的な性質を持つこの化合物において相変化に伴うキャリア濃度(電流の担い手の濃度)の減少に起因していることを突き止めた.

 Cr2Ge2Te6は,結晶相の電気抵抗が高いので,ジュール加熱によるアモルファス化に必要な電流を大幅に低減でき,さらに30nsでの高速書き換えが可能であった.PCRAM動作の消費電力は従来材料に比して,922pJから48pJと90%以上低減できることが確かめられた.

 今後は,低消費電力,高速PCRAM実現に向けて,長期データ書き換え性などメモリー動作性能の更なる評価と,Cr2Ge2Te6の高速相変化メカニズムを解明して行くとしている.

(注)S. Hatayama, Y. Sutou, S. Shindo, Y. Saito, Y. H. Song, D. Ando and J. Koike, "Inverse resistance change Cr2Ge2Te6-based PCRAM enabling ultralow-energy amorphization", ACS Applied Materials & Interfaces, Article ASAP, DOI: 10.1021/acsami.7b16755; Publication Date (Web): December 27, 2017