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加工技術

青色半導体レーザーの高輝度化により純銅を積層造形できる3Dプリンタを開発 ~航空・宇宙・電気自動車等の産業に必要な加工部品への応用に期待~

 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と大阪大学は2017年10月24日,同大学接合科学研究所の塚本雅裕教授らの研究グループが,NEDOプロジェクトにおいて,青色半導体レーザーの高輝度化により純銅を積層造形できる3Dプリンタを開発したと共同発表した.本成果は,2017年10月22~26日に米国アトランタで開催された国際会議 The International Congress on Applications of Lasers & Electro-Optics(ICALEO)で発表された(注).また,2018年1月30日~2月1日まで米国サンフランシスコで開催される国際展示会“Photonics West 2018”で公開を予定している.

 3Dプリンタを用いた積層造形技術は,他の加工法では作れない複雑な形状が造形できる,多様化する顧客ニーズに対応した少量多品種の生産に適している,等の特徴がある.ものづくり革命を起こす技術として,製造業を中心に建築・航空宇宙・医療など,さまざまな分野で実用化が進められている.特に,純銅素材の製造・加工については,航空・宇宙・電気自動車等の多くの産業から期待されている一方で,近赤外線レーザーを用いた従来の3Dプリンタでは高熱伝導性を有する純銅素材の溶融が困難という課題があった.

 これに対し研究グループは,NEDOの2016年度~2020年度プロジェクト「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発/次世代レーザー及び加工の共通基盤技術開発/レーザー加工プラットフォームの構築/高輝度青色半導体レーザー及び加工技術の開発」において,株式会社島津製作所と共同で,日亜化学工業株式会社と株式会社村谷機械製作所の協力を受け,世界で初めて,青色半導体レーザーの高輝度化により純銅を積層造形できる3Dプリンタを実現した.

 まず,純銅粉末を溶融させるのに必要なパワー密度を得るため,出力100Wの高輝度青色半導体レーザーを開発した.波長450nmの青色半導体レーザー光を,コア径100µmの光ファイバーから出力し,直径100µmのスポットに集光した.集光スポットにおけるレーザー光のパワー密度は,1.3×106W/cm2となり,純銅粉末を溶融させるのに十分なパワー密度を実現できた.次に,高輝度青色半導体レーザーの集光ヘッドをX-Y移動ステージに搭載した,SLM(Selective Laser Melting)方式の3Dプリンタ装置を開発した.本装置では,金属粉末を敷き詰め,選択的にレーザーを照射して加熱・溶融・凝固させた後,金属粉末を再度敷き詰め,これを繰り返すことによって3次元造形物を製造する.本装置ではガルバノミラーを使用せず,集光ヘッドを直接稼働させることで,低コスト化している.また本方式は,LMD(Laser Metal Deposition)方式(金属粉末をレーザーの照射領域へ供給することで金属粉末を加熱・溶融・凝固させ,これを繰り返すことによって3次元積層造形物を製造する)よりも造形精度が高い,という優位性がある.

 本成果により,従来の近赤外線レーザーを用いた3Dプリンタでは困難であった純銅をはじめとする材料の積層造形など,航空・宇宙・電気自動車等の産業に必要な加工部品への応用が期待される.特に,SLM方式3Dプリンタは造形精度が高いので,複雑な構造の流路を持った純銅ヒートシンク等への応用が期待される,としている.

(注)Shin-ichiro Masuno, "Metal Powder Bed Fusion Additive Manufacturing with 100W Blue Diode Laser", Paper No. P130, 他,ICALEO 2017 Advance Program