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スーパーグロース単層カーボンナノチューブの生分解性を確認 ~免疫細胞内カーボンナノチューブ生分解率の測定技術を開発~

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)と日本ゼオン株式会社(日本ゼオン)は2017年9月12日,産総研ナノチューブ実用化研究センターの岡崎 俊也研究チーム長(兼)同研究センター副研究センター長らのグループと日本セオンが共同で,スーパーグロース法で作成した単層カーボンナノチューブ(SGCNT)が,免疫細胞内で生分解されることを近赤外線吸収測定法により定量的に明らかにした,と発表した.本研究は,独立行政法人 日本学術振興会の基盤研究課題(C)「生体内分解可能ナノカーボンを用いた標的癌治療薬剤の創製(平成25~28年度)」による支援を受けて行われ,詳細は第53回フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウムで発表された(注).

 カーボンナノチューブ(CNT)は,優れた物理的特性を持ち化学的にも安定であり,エレクトロニクスから医療まで幅広い分野での活用が期待されている.しかし,CNTが環境に流出して体内に取り込まれると,免疫組織に蓄積して健康への影響を与える可能性が懸念されている.CNTについて,急性毒性は低いことが分かっているが,長期的な安全性の観点から生分解特性を定量的に評価することが必要とされている.

 本研究では,CNTが波長700~1100nmの近赤外光を吸収することを利用して,細胞内に取り込まれたCNT量を測定する技術が開発された.CNTを取り込んだ細胞を溶解して750nm付近の吸収を測定すると,生体関連の物質は近赤外域に吸収を持たないので,生体物質の影響を受けずにCNT量の情報だけを得ることができる.

 研究グループは,CNTを加えた培養液で免疫細胞を24時間培養してCNTを取り込ませ,その後,CNTを含まない培養液に細胞を移して培養を7日間継続した.CNTには,産総研と日本ゼオンは共同で生産技術を開発し,日本ゼオンが量産工場を稼働・生産しているSGCNTを用いた.また,実験に用いた免疫細胞は,培養マウスの免疫細胞(Raw264.7),ヒト白血病細胞株(THP-1),初代細胞(マウス肝臓のクッパー細胞)の三種類である.CNTを含まない培養液に移して細胞をサンプリングし,細胞に含まれるCNT量の経時変化を求めると,CNTを含まない培養液に移した直後から減少が見られた.THP-1の場合は,CNTを含まない培地に移して1日で60%に減少した.同時に測定した細胞内活性酸素の発生量は,細胞内CNT含有量との対応があり,4日目にはCNTを加えずに培養した細胞とほぼ同じレベルにまで低下した.さらに,細胞に含まれる総タンパク質の量はCNTを与えなかった細胞とほぼ同じであった.これらのことから,免疫細胞内のCNTの分解は活性酸素によるものであり,CNT分解残さは細胞への毒性も低い可能性のあることが分かった.

 研究グループは,今後,CNTのサイズ,表面修飾などの物理化学特性と生分解性の関連を明らかにし,CNTの生分解性の予測や制御を可能したいとしている.

(注)Minfang Zhang, Mei Yang, Yinmei Deng, Hideaki Nakajima, Masako Yudasaka, Sumio Iijima, and  Toshiya Okazaki, "Uptake and biodegradation of CNTs by macrophage", The 53rd Fullerenes-Nanotubes-Graphene General Symposium, Session: "Applications of nanotubes and Environmental/ Safety characterization of nanomaterials", No. 2P-19, September 14, 2017