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ナノテク情報

ナノテク・材料

開閉可能なポケットを持つナノカーボン製のマイクロキューブ ~ポケットに入る粒子の違いも認識可能,標的薬剤の輸送・徐放など医療応用へ期待~

 国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)は2017年8月8日,同研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)超分子グループのバイリ パルタ(Partha Bairi)NIMSポスドク研究員,南 皓輔 NIMSポスドク研究員,ヒル ジョナサン(Jonathan Hill)主席研究員,有賀 克彦グループリーダー,およびスレスタ ロック(Lok Shrestha)主任研究員からなる研究チームが,各面にひとつずつポケットを持つ,ナノカーボンでできたマイクロサイズのキューブ状物質を作製し,そのポケットに蓋をしたり,再度開けることに成功したと発表した.本研究の成果は,米国化学会が刊行するACS Nanoの電子版に掲載された(注).

 これまで,原子や分子の自己組織化によるナノ構造制御により得られた材料を用いて,生体分子の認識や機能制御,ガス分子を認識するセンサなどの研究が行われてきた.一方,マイクロメーターサイズの細胞やバクテリアなどの認識や制御・操作には,マイクロメーターサイズの構造制御が必要であるが,ナノレベルからのボトムアップでこれを実現した例は少ない.本研究において,研究グループは,ナノカーボンの一種でラグビーボール形状のC70フラーレン分子を用い,「液液界面析出法(Liquid-Liquid Interfacial Precipitation; LLIP)法」を改良したDynamic LLIP法により,フラーレンの3次元結晶であるマクロキューブを作製した.LLIP法は,フラーレンの富溶媒(芳香族溶媒)と貧溶媒(アルコール)との界面において,ゆるやかに結晶を析出させる結晶生成法である.本実験では,フラーレンの富溶媒にメシチレン,貧溶媒にt-ブチルアルコールを用い,大きさの揃った1辺がおおよそ3µmのキューブが得られた.キューブの各面の中央には直径1µm程度のポケット構造があり,このミクロポケットは,過剰のC70フラーレンを追加することで蓋を閉じ,また30kVの強い電子線を照射することで蓋を開くことができる.

 さらに,このポケットは,同じようなサイズのポリマー粒子と黒鉛粒子を見分けることができる.作製したキューブをサブミクロンサイズのポリマー粒子や黒鉛粒子と混合すると,ポリマー粒子はポケットにひとつだけ取り込まれるのに対し,黒鉛粒子では複数個が取り込まれた.これは,キューブにはsp2混成軌道が多い炭素に馴染み易いという性質があるためである.

 本研究で作製されたマイクロキューブのポケット構造は,マイクロ粒子の化学的性質の違いの認識が可能で,蓋も自在に開閉が可能という特徴を持つ.このポケットに標的の薬剤や生体機能性材料を内包させて輸送し,蓋を開閉して徐放を制御するなどの医療応用や,PM2.5のような汚染物質などを選択的に取り込んで環境を浄化するなどの応用が期待されるという.

(注)Partha Bairi, Kosuke Minami, Jonathan P. Hill, Katsuhiko Ariga, and Lok Kumar Shrestha, "Intentional Closing/Opening of 'Hole-in-Cube' Fullerene Crystals with Microscopic Recognition Properties", ACS Nano, Article ASAP, DOI: 10.1021/acsnano.7b01569; Publication Date (Web): July 25, 2017