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ナノテク情報

測定・評価

高イオン伝導度を示すガラス固体電解質の非結晶状態を解明 ~全固体電池実現に向けた研究開発への応用期待~

 大阪府立大学,群馬大学,国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)は2017年6月22日,大阪府立大学の森 茂生教授,群馬大学の森本 英行准教授らの研究グループが,Liイオン電池用の固体電解質を透過電子顕微鏡(TEM)で直接観察し,ガラス状態が大きさ数nmのナノ結晶を含む不均一な状態であることを明らかにしたと発表した.本研究はJSTの戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発「次世代蓄電池」(ALCA-SPRING)の一環として行われ,研究成果はScientific Reports誌に掲載された(注).

 Liイオン電池は優れた性能を持つが,従来からの電池は,電解質に可燃性有機溶媒を用いる点で安全性に課題があり,近年,不燃性の無機固体電解質が注目されている.Liイオン電池用固体電解質には,非結晶状態のガラスと,ガラスを結晶化させたガラスセラミックスの2種類が知られている.全固体電池実現のためには,それらのイオン伝導度を高めることが必要であり,固体電解質中の非結晶状態や非結晶マトリックス中の結晶形態の解明が求められている.本研究において研究グループは,固体電解質材料として,酸化物系よりイオン伝導度が高く,電気化学的にも安定性の高い硫化物系固体電解質(Li2S-P2S5)に着目した.Li2S-P2S5系電解質は組成選択の幅が広く,加熱すると結晶化が進みガラスセラミックスに変わる.このガラスセラミックスは,生成する結晶相の種類によりイオン伝導度が大きく変化するが,ガラスセラミックスの非結晶状態の実態は未だ解明されていなかった.

 研究グループは,TEMによるLi2S-P2S5の結晶状態観察に挑戦し,空気中で不安定なLi2S-P2S5試料作製を不活性ガス雰囲気のグローブボックス内で行い,不活性ガス雰囲気対応の真空TEMホルダーを用いて観察を行った.TEMの高分解能像で個々のナノ結晶を観察し,併せて,異なるナノ結晶の電子線回折から得られる低倍率の暗視野像を重ね合わせることで,非結晶域と結晶域の空間分布が可視化された.

 240℃で熱処理した80Li2S・20P2S5ガラスセラミックスを室温で調べると,非結晶領域中に大きさ約5nmのナノ結晶が連結して存在していることが観察された.X線回折(XRD)パターンから,このナノ結晶は,超Liイオン伝導体であるLi10GeP2S12(LGPS)に類似するLi3.25P0.95S4であることが分かった.このことから,超イオン伝導性ナノ結晶が析出して連結することが高いイオン伝導性の発現に寄与すると示唆された.また,75Li2S・25P2S5を用いた観察では,熱処理前のガラスサンプルはXRDパターンでは完全に非結晶晶状態に見えるが,TEMの暗視野像によると,大きさが5から20nmのナノ結晶が連結することなく,非結晶領域のなかにばらばらに存在していることが分かった.一方,75Li2S・25P2S5を210℃で熱処理したガラスセラミックスサンプルには,互いに隣接して存在する高イオン伝導性のβ-Li3PS4ナノ結晶の存在が認められた.本方法によればサンプルを加熱しながらTEM観察を行うことも可能で,昇温とともに75Li2S・25P2S5ガラスの結晶化が進行する過程も観察されている.

 次世代全固体Li電池実用化に向け,本研究のTEMによる観察法の,適用対象拡大を期待している.

(注)H. Tsukasaki, S. Mori, H. Morimoto, A. Hayashi, and M. Tatsumisago, "Direct observation of a non-crystalline state of Li2S-P2S5 solid electrolytes", Scientific Reports, Vol.7, Article number: 4142 (2017), doi: 10.1038/s41598-017-04030-y; Published online: 23 June 2017