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色収差なし!全反射ミラーを使ったX線顕微鏡を開発 ~世界初50nmの空間分解能で結像に成功~

 大阪大学と国立研究開発法人 理化学研究所(理研)は2017年4月13日,同大学大学院工学研究科の山内和人教授ら,理研放射光科学総合研究センターの石川哲也センター長ら,株式会社ジェイテックコーポレーションの岡田浩巳研究員らの研究グループが,X線全反射ミラーに基づいた色収差のないX線顕微鏡の開発に成功し,世界初となる色収差のない50nmの空間分解能を持つX線像を大型放射光施設SPring-8で取得したことを発表した.この研究成果は,英国のScientific Reports誌に公開された(注).

 なお,本研究は,JST先端計測分析技術・機器開発プログラム「開発課題:4枚の非球面ミラーを用いた結像型硬X線顕微鏡の開発」(開発期間:平成22年10月~平成26年3月)の一環として行われ,その後,科研費基盤研究(B)「色収差のない結像型X線顕微鏡の開発と顕微分光への応用」として引続き研究されたものである.

 X線顕微鏡は,波長の短い電磁波(X線波長≒1Å)を用いているため,高分解能な観察が可能で,特に高い透過能を生かして物質内部を見ることができる特徴を持つ.しかし,これまでの開発品では屈折レンズや回折レンズを使うため,波長によって光の屈折率が異なり,結像に「色収差」が発生する問題があった.従って,さまざまな波長を利用する顕微分光には適さず,高度な顕微分光はほとんど行われていない.

 研究グループは,こうした課題をクリアするために全反射ミラーを用いるX線結像光学系を採用した.全反射現象では光が波長によらず同じ角度で反射するので,色収差のない結像光学系が実現できる.しかし,全反射ミラーに要求される作製精度が厳しいのでこれまで成功例はなかった.研究グループは,反応性微粒子懸濁水の供給・加工物表面原子の弾性破壊を用いた超精密加工法EEM(Elastic Emission Machining)により全反射ミラーを約1nmの作製誤差で作製する技術を確立し,ミラー面の水平・垂直方向に楕円あるいは双曲線の形をした4個の全反射ミラーで4回反射させる結像光学系の開発に成功した.これを使って結像型X線顕微鏡を構築し,大型放射光施設SPring-8のBL29XULビームラインで,世界で初めて色収差なく50nmの空間分解能(近接する2つの点が2つのものとして認識できる最小距離)を持つX線像(波長≒1.24Å)の取得に成功した.

 さらに,本X線顕微鏡を用いてXAFS(X-ray absorption fine structure,X線吸収微細構造)分光法と顕微鏡を組み合わせたXAFSイメージングを実施した.元素やその価数などを識別しながら微小領域を観察できるもので,プレスリリースでは具体例として,同じ試料についてのSEM像,X線像,その中の亜鉛粒子とタングステン粒子,それぞれの分散状態の写真が並べて示された.

 本研究で実現したX線顕微分光は,X線の持つ高い分析能力と顕微鏡の持つ高い空間分解能を併せ持つため,さまざまな領域で強力な分析ツールとなる.また,SPring-8-IIやSLiT-Jといった次世代放射光施設への応用や,本顕微鏡を生かした新しい顕微分光アプリケーションの登場も期待されるとしている.

(注)Satoshi Matsuyama, Shuhei Yasuda, Jumpei Yamada, Hiromi Okada, Yoshiki Kohmura, Makina Yabashi, Tetsuya Ishikawa and Kazuto Yamauchi, "50-nm-resolution full-field X-ray microscope without chromatic aberration using total-reflection imaging mirrors", Scientific Reports, Vol. 7, Article number: 46358 (2017), doi: 10.1038/srep46358; Published online: 13 April 2017