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中分子や高分子を安定に貯蔵できるナノカプセルを開発 ~産業用酵素やバイオ医薬品の包装剤への応用に期待~

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)は2017年2月7日,同研究所 機能化学部門界面材料グループの亀田 直弘主任研究員と増田 光俊研究グループ長が,ペプチドやタンパク質のような中分子や高分子を封入できる内径5~40nmのナノカプセルを開発したと発表した.本技術の詳細は2017年2月10日につくば国際会議場(茨城県つくば市)で開催の産総研 材料・化学シンポジウム 「21世紀の化学反応とプロセス ―快適な生活を支える機能性材料の新展開―」で発表された.

 近年,医薬品や機能性化粧品,産業用酵素などの有効成分として,ペプチドやタンパク質などの分子量が数千から数万の中分子が注目されている.これらの分子を安定に貯蔵したり,作用を発現させるところまで安定に送り届けるためにナノカプセルに封入することが行われている.このような機能を持つナノカプセルとしてリポゾームが実用化されているが,リポゾームは低分子の封入には優れた性能を示すが,中分子や高分子はリポゾームの外表面に吸着するため,効率的に封入することが出来なかった.

 本研究で研究グループは,アミノ酸,糖,脂肪酸を原料とするチューブ状のナノカプセルを開発した.これまでの研究から,ナノカプセルの内径サイズとタンパク質の安定化機能には相関があることが分かっている.本研究では,大きさの異なるアミノ酸や糖を用いて,内径の異なる(5nm,8nm,12nm,20nm,25nm,30nm,40nmなど)種々のナノカプセルが合成された.開発されたナノカプセルは,一端にアミノ酸,他端に別のアミノ酸または糖を配した棒状の脂肪酸分子で,一端のアミノ酸を内側に,他端のアミノ酸または糖を外側に向けて放射状に配列した壁からなり,内部にナノ空間を持つ.ナノカプセルの内径は外側に配置されるアミノ酸の大きさで決まり,アミノ酸が大きいほど内径の小さいナノ空間になる.アミノ酸や糖の種類を変えると,ナノカプセル内側の電荷状態を調整することもできる.このように,ナノ空間のサイズと電荷状態を封入対象とする分子に応じて調製することが可能である.

 そこで,分子量1万のリゾチームを内径の異なるナノカプセルに封入して保存安定性を調べたところ,ナノカプセルの内径が5nmの場合は4週間経過しても活性は殆ど変化しないが,内径12nmのナノカプセルでは4週間後には初期の60%以下にまで活性が低下した.ナノカプセルに封入しない場合はさらに大きく劣化し,4週間後には初期の約40%の活性となった.同様の実験が分子量10万のクエン酸合成酵素でも行われ,内径20nmの場合には活性の低下は10%以下に収まるが,内径30nmの場合やナノカプセルに封入しない場合は活性が大きく低下することも確認された.これは,タンパク質がその大きさに適合したナノカプセルに封入されることで孤立し,凝集や会合が抑制されて構造が安定するためと推測されている.内径20nmのナノカプセルであれば分子量の大きな分子でも封入できるので,抗体のような大きなタンパク質分子の安定化にも有効と思われる.

 本研究で開発されたナノカプセルは,分子量の大きい化合物の安定化機能を持ち,機能性化粧品,産業用酵素,抗体医薬品の分野での応用が期待されるという.