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ナノテク情報

合成・材料

酸化グラフェンの酸素含有量を自在に制御する方法を確立 ~セシウム吸着能や導電性の関係が明らかに~

 岡山大学は2016年2月25日,同大学異分野融合先端研究コアの仁科勇太准教授らの研究グループが,酸化グラフェンの酸素含有量を精密に制御する方法を確立し,酸素含有量による,導電性,セシウム吸着能,キャパシタンス,酸化力などの物理,化学的性質の変化を明らかにしたと発表した.本研究成果は,国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)研究課題「炭素二次元シートの自在合成と機能創出」によって得られ,英国科学誌Scientific Reports電子版に掲載された(注).

 酸化グラフェン(GO)は,炭素原子と酸素原子を主として含む2次元シート状の材料で,電極,触媒,水の浄化,放熱,樹脂補強材,潤滑剤などのさまざまな用途が見込まれ,溶液中の化学プロセスで大量合成が可能なため,実用化が最も近いナノカーボン材料の一つであると期待されている.しかし,濃硫酸中で強力な酸化剤を用いて合成するので,その条件設定が難しく,酸素含有量を精密にコントロール出来なかった.このため,酸素含有量による物理,化学的特性の変化も明らかではない.

 今回,本研究グループは,副反応を抑えることで酸素含有量を20~60%の間で,約5%毎に制御してGOを合成し,それぞれの酸素含有量で,物理,化学的性質を明らかにした.合成は,500グラムスケールでも可能という.研究グループは,酸化による制御と還元による制御の2つの方法で酸素含有量を制御した.前者はH2SO4中のKMnO4によるグラファイト(黒鉛)の酸化(oGO),後者は高度に酸化したグラフェンのヒドラジンによる還元(rGO)である.いずれでも上記の,20~60%の間で,約5%毎の酸素含有量制御が可能で,それによって導電率,吸着能,酸化力などが変る.しかし,oGOとrGOには特性の差があり,黒鉛組織(graphitic structure)と欠陥の違いによると推定される.

 酸素含有量による特性の変化を見ると,導電率は酸素含有量増加に伴い指数関数的に低下するが,酸化しすぎると欠陥が生じて導電率が下がってしまう.目標とする導電率のグラフェンを得るには,適度に酸化してから還元して欠陥を制御する必要がある.セシウムの吸着能は,十分に酸化して酸素含有量が多いほど高く,GOの表面積と酸素官能基が寄与すると見られる.ベンジルアルコールのGOによる酸化で評価した酸化力は酸素含有量が多いほど高いが,rGOの酸化力はoGOの半分くらいで低く,酸素含有量30%以下では,ほとんど酸化力を持たない.GOを電気二重層キャパシタの電極に用いたとき,容量は表面積と導電性とで決まる.酸素含有量が多いと導電率は下がるが,表面積は増すので酸素含有量に最適値がある.十分酸化して表面積を高くした後に還元して酸素含有量を23wt%にしたGOが最も優れた容量220F/gを示した.

 本研究により,GOの酸素含有量を精密に制御して合成することが可能になり,酸素含有量に応じた物理,化学的特性が明らかになった.今後,スーパーキャパシタ,リチウムイオン電池,触媒,潤滑剤,ポリマーコンポジット,水浄化剤等の用途に対して適切な酸化グラフェンを選択することで,酸化グラフェンの応用研究が進展し,実用化に向けた研究が本格的にスタートすることを期待するとのことである.

(注)Naoki Morimoto, Takuya Kubo, and Yuta Nishina, "Tailoring the Oxygen Content of Graphite and Reduced Graphene Oxide for Specific Applications", Scientific Reports, Vol. 6, Article number: 21715 (2016), doi: 10.1038/srep21715; Published online 25 February 2016