参画機関から

分子・物質合成 名古屋大学 名古屋大学

世界で初めて溶出順序を自在に反転できるキラル固定相の開発に成功

 名古屋大学 分子・物質合成プラットフォームは,金沢大学の前田 勝浩准教授らのグループとの共同研究で,固体状態でらせんの巻き方向を反転させることが可能なポリアセチレン誘導体の合成に成功し,さらにこの特性を利用してエナンチオマーの溶出順序を自在に反転(スイッチング)できる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用のキラル固定相の開発に成功しました.

 HPLCによるエナンチオマーの分離(光学分割)は,光学活性化合物の分取・分析の両方に有効であるため,医薬品の開発研究等の分野において極めて重要な技術になっており,様々なHPLC用キラル固定相が開発されています.HPLCによる光学分割では,先に溶出する成分が後から溶出する成分に重なることがあるため,実際の分析では,少ない成分が先に溶出する方が好ましく,逆に,大量の光学活性体を分取する際は,必要とする成分が先に溶出した方が高い光学純度で得られます.しかし,溶出順序を自在に制御可能なキラル固定相は,これまで開発されていませんでした.

 今回,共同研究グループでは,ポリアセチレンの側鎖にビフェニル基を導入した新規ポリアセチレン誘導体を合成し,固体状態で光学活性アルコールと相互作用させることによって,ポリマー主鎖に一方向巻きのらせん構造が誘起されるだけでなく,一旦誘起されたらせん構造が光学活性アルコールを除去した後も記憶として保持されることを見出しました.さらに,このポリマーをシリカゲルにコーティングしてHPLC用のキラル固定相として応用し,光学活性アルコールを含む溶離液をカラム内に通液する前処理により,ポリマーのらせんの巻き方向を反転させることによって,エナンチオマーの溶出順序を自在にスイッチングすることに世界で初めて成功しました.

 本研究成果は,名古屋大学と金沢大学の共同で得られたもので,英国科学雑誌「Nature Chemistry」(2014, doi:10.1038/nchem.1916)に掲載されました.


固体状態で一方向巻きのらせん誘起と記憶が可能なポリアセチレン誘導体を利用した
溶出順序の反転が可能なHPLC用キラル固定相の模式図