メニュー
NanotechJapan Bulletin Vol.2, No.2, 2009 発行

第7回 ナノテクノロジー総合シンポジウム(JAPAN NANO 2009)開催報告

j2-2-33.jpg

 「第7回ナノテクノロジー総合シンポジウム」が平成21年2月18日(水)に文部科学省イノベーション創出事業ナノテクノロジー・ネットワークの事業として,東京ビッグサイト会議場において開催され,700余名の参加による盛況となった.今回は人類が直面するエネルギー問題と地球環境問題をナノテクノロジーの活用によって解決するという趣旨からテーマは“エネルギーと環境のためのナノテクノロジー”であった.オープニングセッションでは,磯田文雄 文部科学省研究振興局長から「ナノテクはすべての基盤であり,本シンポジウムが文部科学省における人材育成や循環可能な技術推進の新たなきっかけになる」との期待を込めた挨拶があった.続いて,岸輝雄 物質・材料研究機構理事長からナノテクノロジー・ネットワーク事業における本シンポジウム役割について説明があった.

 

 基調講演では,茅陽一氏(地球環境産業技術研究機構副理事長・研究所長)が「温暖化抑止に向けての技術」と題し,環境に関連したエネルギー問題の重要課題の全体像とそれらを担うナノテクノロジーへの期待について講演した.すなわち環境に関連したエネルギーを考える上でナノテクに期待する立場から,温暖化の状況と低炭素化のための鍵について話を切り出した. 温暖化に対処するには大気中の炭酸ガス濃度の安定化が不可欠で,炭酸ガスの排出量を現在の10分の1 以下にすること,燃料の多くは化石燃料で脱炭素目標が必要とし,現状の日欧米のCO2削減目標を示し,その削減に技術革新が絶対的に必要で,その重要技術21を示した.そのうちのエネルギー供給技術,省エネルギー,交通関係技術を取り上げ,とくに供給技術については,原子力の重要性や問題点(資源問題では高速増殖炉の利用と燃料処理)について,また,風力発電,太陽光発電における天候や日照による発電の変動性への対処としてのバッテリー利用や宇宙発電・マイクロ波伝送についての設備コストの問題点について説明した.低温熱利用での地熱利用の有効性や,CO2の地中貯蔵による削減の有効性にも言及し,エネルギー問題を考えられる上で関連する技術の概要と問題点についての講演であった.

 基調講演を受け,引き続き3つセッションが行なわれた.各セッションのテーマはセッション1が「エネルギーの生成と利用」,セッション2が「エネルギーの輸送と貯蔵」,セッション3が「環境・省エネルギー」である.

 セッション1「エネルギーの生成と利用」では,Dr.Heiz Frei氏(Helios Solar Energy Research Center, NBNL, Berkeley, USA)が「米国ヘリオス・プロジェクトにおける太陽エネルギー利用—人工光合成へのナノ材料的アプローチ」,韓礼元氏(物質・材料研究機構)が「ナノテクノロジーを用いた色素増感太陽電池」,佐々木一成氏(九州大学)が「ナノテクノロジーを駆使した次世代燃料電池」及び西澤松彦氏(東北大学)が「バイオニック発電デバイスの研究開発動向」と題した講演を行った.

 セッション2「エネルギーの輸送と貯蔵」では,Dr. Karl-Heinz Haas氏(Fraunhofer-Institut Für Silicatforschung, Germany)が「ドイツにおける環境・エネルギーに対応したナノテクノロジー」,堂免一成氏(東京大学)が「太陽と水から水素を生成する光触媒システムの開発」,北川進氏(京都大学)が「新しい金属錯体材料の化学と応用」及び細野秀雄氏(東京工業大学)が「新しい超電導物質:鉄系超電導材料および超電導エレクトライド」と題した講演を行った.

 セッション3「環境・省エネルギー」では,Dr. Spike Narayan氏(IBM, lmaden Research Center, USA)が「地球環境へのナノテクノロジーの挑戦−IBMアルマデン・サウジアラビアの脱塩,太陽電池及びグリーンケミストリーへの取組」,河本邦仁氏(名古屋大学)が「ナノ熱電変換と環境・エネルギー技術」及び田尻耕治氏(産業技術総合研究所)が「空調エネルギーの削減を図る省エネルギー型建築部材の開発」と題した講演を行った.

 講演概要は第7回ナノテクノロジー総合シンポジウム予稿集を参考いただきたい.

 以上の第一線で活躍中の内外の研究者からの合計11名の招待講演は,研究者のみならず多くの関係者をひきつけ,人類が直面するエネルギー問題と地球環境問題にナノテクノロジーの活用によって挑戦する研究開発状況を知っていただく場となった.次回は2010年2月17日に行なわれる予定である.

(元nanonet 小澤英一)